9- 一般財団法人 日本学協会
                       

『日本』令和8年1月号

万邦をして各々其の所を得せしめん

 仲田昭一 / 『日本』編集長


日本永遠への祈り

令和も八年を迎へた。さまざまに世は変はるも、やはり正月は希望を抱ける新鮮さがある。そのよろこびを、幕末勤王の歌人佐久良東雄は
  朝日影(あさひかげ) 豊栄(とよさか)のぼるひのもとの やまとの国の 春のあけぼの
と詠(うた)ひ、さらには
  朝日影 豊栄のぼる御宇(みよ)になりて さくらの花を さかせてしがな
と詠んで、王政復古を目指したのであつた。

今日、ほとんどの国民は神社仏閣に元朝参りをして新年を祝ひ、一家親族の安寧、国家社会の安泰を祈願する。我が家も国旗を掲揚し、皇室を戴く日本に生れたことへの喜びと誇りとを体感する。そして天地の神々に向かひ、皇室の弥栄(いやさか)と日本国永遠への祈りをささげることを常としてゐる。

この素直な日本国民の心持ちは、永続するものであると信じたい。


昭和改元の意味

また、今年は「昭和改元百年」を迎へた年でもある。昭和元年十二月二十八日、昭和天皇は御践祚(ごせんそ)後、朝見の御儀に下された勅語の中で

浮華ヲ斥(しりぞ)ケ、質実ヲ尚(たっと)ヒ、模擬ヲ戒メ創造を勗(つと)メ、日進以テ会通ノ運ニ乘シ、日新以テ更張ノ期ヲ啓(ひら)キ、人心惟(こ)レ同シク、民風惟レ和シ、汎(あまね)ク一視同仁ノ化ヲ宣(の)ヘ、永ク四海同胞ノ誼(よしみ)ヲ敦(あつ)クセンコト、是(こ)レ朕カ軫念(しんねん)最も切ナル所
と宣べられた。

即ち、国民は質実剛健を以て日々の進取創造に努め、人心一致して国家の繁栄と世界平和の実現に邁進(まいしん)することを求められた。同時にそれは、陛下御自身の切なる願ひでもあられた。

さらに昭和十五年九月二十七日、日独伊三国条約成立の際に下された詔書では

惟(おも)フニ万邦ヲシテ各々(おのおの)其ノ所ヲ得セシメ、兆民(ちょうみん)ヲシテ悉(ことごと)ク其ノ堵(と)ニ安ンゼシムルハ、曠古(こうこ)ノ大業ニシテ、前途甚ダ遼遠(りょうえん)ナリ
とも宣べられてゐる。

即ち、世界の民族が互ひに尊重し合ひ、それぞれにその特質を発揮されて、世界の繁栄に貢献し合はうと決意されたのである。その根底には、各自の独立自存維持への堅固な決意が込められてゐることは当然である。この互恵互助、そして互ひの繁栄を期することが崇高な日本の理想であつた。


大東亜戦争を回顧

この理想を以て戦後を回顧してみるとき、日本の現状はどうであらうか。日本国家の誇りを語り、独立自存への意欲、精神は確立されてゐるか。国民同士、互恵互助の麗しき包容力は不変であるか。自利および他利のバランスを保つた他民族への慈愛の精神は確かであるか。

戦後の原点に立つてみよう。大東亜戦争に敗れた日本への占領方針として、「降伏後に於ける米国の初期の対日方針」が公表された。その第一部の「究極の目的」として「日本国が再び米国の脅威となり又は世界の平和及び安全の脅威とならざることを確実にすること」とあつた。非は全て日本に有りとされ、日本の悠久の歴史は否定された。追ひ打ちをかけたのが東京裁判の判決「侵略国家日本」の烙印である。これを前提として「日本国憲法」は制定されたのである。改憲必須は自明のことである。

戦後八十年は過ぎたが、日本国民がこの桎梏(しっこく)から抜け出してゐない。そして、抜け出すことは実に容易なことではない。日本人の「覚悟」が試されてゐる。

大陸問題を回顧してみる。そもそも他民族との交流は至難である。明治新政府が開国進取の方針のもと、朝鮮に対して行つた好意的開国勧誘は是であつたのか。支那を中心とする中華思想は、朝鮮にも影響し、朝鮮もまた日本を東夷と視てゐた。外交は、容易には進展しなかつた。そこへ、スラヴ民族のロシアが進出して来た。ロシアの南下は、日本への脅威となり、圧迫となる。到底見過ごすことはできない。朝鮮は、日本との提携策は無く、しかも自らの手でロシア南下を阻止する気概はなかつた。

満洲民族も分裂混沌(こんとん)としてゐて漢民族の侵入を許し、混迷に拍車をかけてゐた。満洲民族が建国した清国も、英仏など西欧諸国の侵略を受け、独立自存は容易ではなかつた。革命を以て勢力を回復した漢民族の中華民国も、共産党勢力の拡大を含めて内部分裂を繰り返し、国家の体をなしてゐなかつた。そこに、貪欲な米国の西進が迫つて来た。このやうな状況の中で、日本の忠良な政府や軍人及び国民は、陛下が期された「万邦共栄の実現」に邁進したのである。

しかし一方で、冷静に回顧するとき、諸民族の誇りや自尊心を尊重し、彼らの独立自存に配慮し、互助互譲の精神を以て対することはできたのか。そこに「驕(おご)り」は無かつたのかと思ふ所もある。


万邦平和の魁とならん

「日本を強くすること」を信念とする高市早苗首相が誕生した。少数与党としての苦悩は尽きないであらうが、首相の純粋な正義心と強固な決意、そしてその実践力とが、日本を守り、発展させることになる。その背後を支へるのが強力であるべき議員たちである。現在、その議員たちに使命感の劣化が見られる。正義を説く前に、保身と利己心に汲々(きゅうきゅう)とし、確かな国家観、世界観を保持し訴へる議員が少ない。「裏金問題」を明快に処理できず、国民の不信を招いた責任は大きい。これを払拭(ふっしょく)できない限り、強力な政治力は発揮できない。歴史的に見て、政治家の不正は絶えることはないが、これを許してはならない。特に現在は、国民の信を得て国内外に対処しなければならない重大な時期である。決して「拙速」は許されない。慎重に、着実に、そして堂々と自信を以て政策推進に邁進しなければならない。

我々国民も自覚しよう。格差社会が広がつてゐるといはれる。基本食料の米価が混迷してゐる。諸物価の高騰も続いてゐる。国民に、稷社(しゃしょく)を思ふ義の心が欲しい。強靭(きょうじん)な国家とは、自助共助を根底とした国民の団結であり、国土の保全である。

日本の敗戦後は、世界に平和が訪れるといはれた。欺瞞(ぎまん)である。事実、国連は無力となつて大国主義が横行し、世界の各地に戦禍が及んでゐる。連日のマスコミ報道には、多くの戦死者や飢餓におびえる大人、子どもたちが溢れてゐる。正視できない惨状である。しかし、ロシアのウクライナ侵略について、東部地区住民がロシアへの帰属を願望してゐるとの理由が挙げられる。この口実は注意しなければならない。台湾や沖縄への波及が懸念される。

私ども日本国民は、「民安かれ、国平らかなれ」との崇高な祈りを捧げられる皇室を戴く幸福感を以て、一国平和主義の我欲に陥らず、他民族への温かな眼差しを注ぎつつ、世界平和に貢献していかうではないか。新年に当り、改めてその魁(さきがけ)となる年であることを宣言したい。